ジャンダルム飛騨尾根2018.07.14

ジャン飛騨尾根00

 ラストピッチ!! 


<メンバー> ita なお とー

<ルート> 13日 名古屋21:00~アカンダナP24:30 
        14日 アカンダナP6:00~7:00上高地7:30~9:50岳沢小屋10:45~天狗沢~天狗のコル13:30~3020ビバーク地15:00 泊
        15日 スタート4:40~5:15ジャンダルム基部5:40~α沢下降~6:30トラバースポイント~取付6:50~10:35ジャンダルム10:55~11:20ビバーク地12:00~12:30天狗のコル~14:45岳沢小屋15:10~17:10上高地18:00~19:00アカンダナP~22:00名古屋


 上高地からほど近い、奥穂と前穂周辺には手頃なバリエーションルートが幾つも有る。
その中の一つ、ジャンの飛騨尾根。

冬~春の積雪期が旬のルート、今ならさほど難しく無いだろうが、フル装備で稜線まで上がっての登攀は色々と大変。
まずは核心部の尾根をということで、主稜線からα沢を下降して登り返す計画とした。

 岳沢は朝から暑く、天然クーラー(風穴)に助けられながら。 途中7合目で明神岳への踏み跡をなおさん確認。
岳沢小屋のテラスは外人さんもくつろぎ、さながら山岳リゾート。足元にはクルマユリが咲き誇ってる。

ジャン飛騨尾根04
岳沢の人気者

 一息付いて、毎度の天狗沢。
まだ花畑は序盤だが、それなりにキンポウゲ等、彩を添えている。

ジャン飛騨尾根05

 中盤から右岸を巻く道が見えてくるが、ここはガレ場を直登で。
やがて見えてきた雪渓は200m程繋がっている。
アイゼンは付けたくなかったので、左岸畳岩側より大きく巻く。
再び沢筋に戻るが、コルまでの100mのガレが特に悪く、大きな岩ごと崩れ落ちてくる。

ジャン飛騨尾根07
 急傾斜の天狗沢

 だましだまし、コルに辿り着くと小屋跡にテントサイトが。
ここで終了という声も?しかしもう少し先まで行く事とする。
主稜線に出ると、西穂~奥穂間の縦走者にちらほら。皆暑さに疲れてそうだが、挨拶は晴れやかな表情。
そう、穂高ルートの中でも一番おいしい所なんだ。

標高3020地点でサイト適地に辿り着く。 もうそろそろ良かろうと荷を下ろし、大休憩。
しかし暑い。この時点で他に涼しい山、存在するのだろうか??

まだ陽が高いが待ち切れずにとーさん料理スタート。今日は飲み相手がいるので嬉しい。
飲みながら、長い長い時間をかけて陽が沈むのを眺める。
こんなに長く、美しい夕日は久しぶりに見たかなあ。

ジャン飛騨尾根09
佇む人

ジャン飛騨尾根10
遊ぶ人
 
 夜は満点の星空。なおさんは流れ星を4つ程見たとの事で一生懸命探すが、老眼??の二人には全く見えなかった。

翌朝は朝日を浴びて歩けると思ったが、生憎吊り尾根の向こうからの日の出で、終始日陰を登る。
まあ涼しくて良いけど。 コブ尾根の頭で向いのジャンを眺めてると、奥穂から次々と縦走者が。
賑やかな主稜線より、ジャン手前、α沢を飛騨側へ下降始める。
ゴロタ石ルンゼ、最初はスキー初級ゲレンデレベル。やがて大粒、傾斜も急になり落石に気を使っての下降。
やがて滝?も出て来る。適度な緊張、いやあ楽しい!!

ジャン飛騨尾根11
ガレ沢の下降

 懸垂用ハーケンとスリングが側壁に有るが、1本づつしか無いので補強の必要が有ったかも。
3つ目の滝、右岸を懸垂するが、どうやらこの辺からトラバースすればT3から始まる主要ルートに乗れそうな感じ。
ロープ全出し、25m懸垂し、やや悪いトラバースの踏み跡に従い這松帯の際より稜線へ。
基点のハーケンにセルフ取り、いよいよスタート。

ジャン飛騨尾根12
 取付に到着

itaリード、セカンドなおさん、ラストとーさんの順。
スムーズに登る為、セカンドはアセンダー使用。この為になおさんとは平日事前練習まで行った。
ジャンまでの稜線は基本リッジで、北側は奥穂~槍を見渡せ、南側はコブ尾根頭から派生する尾根越しに、西穂高岳が
遠望出来る。

ジャン飛騨尾根17
 後方、笠ヶ岳をバックに しばしまどろむ

 グレードはⅢ~Ⅳ級くらい。登山靴で十分楽しめるが、浮岩が多く、持った岩が簡単に外れる。
所どころにあるハーケンはあまり当てにならず、ボールナッツ、カムで支点を取っていく。0.3~1番使用。

ジャン飛騨尾根13
ビレイ支点も工夫して

3ピッチ目のピナクルを繋ぐルートは? ?って感じのサーカスまがいの動きを要求され面白い。
慎重に中間支点を取ってなおさん続くが、慣れないピナクル間のアクロバットに珍しく緊張。
ラストのと―さんは驚くほど躍動的に(本能的?)に身軽さを生かして危なげ無く追ってきた。

ジャン飛騨尾根14
ピナクルを繋ぐ 

 4ピッチ目はT2側壁トラバース。 なんとトラバースしながら10m程下り有り。
なおさんのアセンダーは下りでは効かないので慎重に下る様指示。また、ラストのと―さんの為に支点は全て残置してもらう。

ジャン飛騨尾根18
 この下りにはまいった。

そして核心の電光クラックを含むスラブ。出だしが少し難しく緊張するが、まあ何とかなるレベル。
頭上に出てきた陽の光を浴びながらのクライミングは、終盤を迎える。

ジャン飛騨尾根01
 核心、電光クラック まぶし~い!!

 最終ピッチではロープ出すか迷ったが、登って見ると見かけ以上に高度感有り、やはり最後までロープ解かずに良かった。
後は天使の待つジャンダルム山頂までのビクトリーロード、一歩一歩楽しんで登頂。

 ジャン飛騨尾根19
 今年も来ました。

登頂は達成するも、帰路は長く険しい。
来た道を引き返すと共にデポした荷物を回収。天狗のコルに到着。
最初のガレを50m程下り、その下100mの雪渓を下る準備。

ジャン飛騨尾根20
 雪渓は懸垂で

 雪渓の端に懸垂用ロープをセットしてると、後ろより落石音と悲鳴が・・
とーさん、触れた大岩と共に流されて3回転ほど滑落したらしい。
派手な滑落にも関わらず、幸いヘルメットとザックで衝撃吸収されたらしく、脛に小さな裂傷を負っただけで済んだ。
ルンゼの下りは油断出来ない。気を付けて降りねば・・・
最後にヒヤッとしたものの、メンバー間での連携も上手く行き、充実した山行となりました。
記 ita

と―さんの感想

天狗からジャンダルムはとにかく上るのが楽しい山でした。
ただ上りでとにかく難しかったのが天狗のコルへの20m!
そして帰りも避けて通れない下りの20m。

ジャン飛騨尾根21

下りは更に難度が増し、一足ごとに慎重に足場を選んで進めた。
が、一歩置いたとたん足元の大きな岩が流れ、身体が巻き込まれるのに止まることできない。
ひっくり返った亀のように背中でザックボードに乗りながら、岩と一緒に回転し3m以上流れされた!
ヘルメットに岩が当たるのを感じ、やっとガレ石と身体が止まり立ち上がってみたが怪我はない。

ラインをずらし距離を置いていたのでitaさんにもなおさんにも被害及ばず。
一部始終を見ていた、なおさんをかなり心配させたけど…
さすがにお尻は強打したようで動いていたら痛んできたが歩き続けることでほぐしながら無事下山できた。

 あの時、どうすればよかったんだろう?
細心の注意を払って体重を分散し一歩ずつ踏みしめていた。
でもテン泊の荷を背負っておりその重みと疲れとで脚の踏ん張りが効かなく足を取られた。
ただ背中のザックが身体を浮かせ岩の流れのなかで身体をしっかり守ってくれていた。

ヘルメット、長袖、長ズボン、厚手袋、山靴そしてザックがなかったら
全身、打撲・裂傷あるいは骨折で歩けなくなってもおかしくないような今まで経験したことのない危ない滑落だった。ボードになってガードしてくれたザックに感謝しつつ身体の表面を包むことが重要だと痛感。

そして技術と体力が何より身を守ると身に沁みたので練習山行もがんばらなきゃ!
貴重な体験をありがとうございました。
心配かけましたが、次なる山へまたご一緒しましょう♪

なおさんの感想

ジャンが好き、そして とーさんのゴハンが食べたい。この2点のみで参加を決意。

ジャン飛騨尾根22

岳沢までは涼しく軽快に。しかし天狗沢…何なの?ここ…浮石注意どころか全部浮石やん。破線とはいえ、ここって一般道なんだよね?何て事を思いながら必死で登る。
なのにita兄貴はテント、ロープ、大量のガチャ類を背負ってるにもかかわらず楽しそうに登ってく。やっぱり変…いや鉄人です。

コルに到着してホッと一息。ジャン基部に向かい稜線を登っていきますが3000m越えたあたりでギブ。今日はここまで。
しかしここでも兄貴はじっとしてられない。ピッケル使いしつこく整地。「もういいんじゃない」って私。
しかし、とーさんの一言「もっとふかふかにして!」…兄貴さらに頑張る。お二人の力関係がよーくわかりました…。

その後は酒飲みにはたまらないタイミングで次々と出されるとーさんの絶品お料理の数々。
やっぱり参加してよかったです!!

翌日が本番。ジャン基部まで登り飛騨尾根取付きまでαルンゼを下ります。ここは正直、人が立ち入ってはいけない場所なのではないかとも思いました。まさに岩の墓場。巨岩が全て浮いてる。ホント怖かった。
何とか無事に取付きに到着。

ここからはご褒美のような天空のクライミング!高度感、ロケーション、ちょうどいい難易度。もう幸せなため息しか出ないです。

そしてジャン頂上で一般道に復帰。人がいっぱいでびっくりしました。順番待ちで天使と共に記念撮影。

さぁ後は下山だけ。でも実はここからが核心でした。天狗沢で数m後ろを歩いてたはずのとーさんが私の真横を回転しながら落ちていく。一瞬色んな事を覚悟しました。が、笑顔で立ち上がるとーさん…やっぱりこの人も鉄人やわ…。

最近では珍しく私が一番年下の山行。ずっと二人に甘やかさせてもらって、末っ子気質の私にはとっても幸せな山になりました。
また甘やかし山行、期待してます!!

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