南八ヶ岳バリエーション (小同心クラック、石尊稜敗退) 2020.02.01-02

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ここから恐怖のトラバースが始まる


<メンバー>
たろー、なお、なべちゃん、いさお

<コース>
1日目
美濃戸(5:30)~赤岳鉱泉(7:40~9:00)~大同心稜~小同心クラック取り付き(12:15~16:00)~赤岳鉱泉(17:30)
2日目
赤岳鉱泉(7:45)~石尊稜取り付き(9:15~11:30)~赤岳鉱泉(12:20~13:25)~美濃戸(15:00)


 昨年の赤岳主稜に引き続き挑戦する冬季バリエーションは昨年偵察(敗退)した小同心クラック(1級)と石尊稜(2級下)。去年に比べ経験値も上がっているし何より天気は安定している。これなら大丈夫でしょうと1泊2日で2本攻略の(つもり)欲張り計画を組む。

 殆ど寝ない状態で愛知を出発、美濃戸には5時到着。ヘッデンで北沢を歩くと赤岳鉱泉の手前で明るくなってきた。急いで受付をし、整地済のテン場をゲット。それでもテントを張り、なんやかんや準備をしていたら出発がかなり遅くなってしまった。

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ヘッデンスタート

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明るくなってきた

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赤岳鉱泉

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テント設営

 大同心稜は昨年経験済だが今日は先行者のトレースは薄く、プチラッセルを強いられる。元気ななべちゃん、いさおさんはグイグイ登るがなおちゃんは早くもアップアップ。しかし天気は最高で青と白の世界が美しい。何だか日本離れした景色だ。

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大同心沢へ

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楽しそうななべちゃん

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大同心が見えてきた

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あれが小同心

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ちょっと一服

 大同心基部からのトレースが消え、自分達でルートを切り開かなければいけない。今日は下までクッキリ見える分怖い。いさおさんがルートを切り開き小同心クラックの取り付きテラスに着いたのは12時を過ぎてしまっていた。

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大同心基部からトラバース

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これは怖い

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これも怖い

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これを登れば取り付きのテラス

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最後のトラバース

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着いたかな?

 でも登攀ピッチは4ピッチ、どんなに遅くても15時には稜線に抜けられるだろう。硫黄岳を経由したとしても赤岩の頭を過ぎればヘッデンでも下れるし、なんといっても今日は赤岳鉱泉泊。怖いトラバースを戻るよりも登ってしまった方がいいだろうと(簡単に)思っていた。

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着いたみたい

 なべ/いさお、なお/たろーチーム分かれて登攀開始。まずはなべちゃんチームから。見た目はホールド豊富でそれ程難しく無さそう。なべちゃんはスタート地点から見えているビレイ点でピッチを切った(20m位?)その後、いさおさんがスタートし、ビレイ点まで行ったタイミングでなおちゃんが登攀開始。

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テイクオフするも

 なべちゃんチームはいさおさんがなべちゃんの5m程上でピッチを切ってしまっている。そしてなおちゃんは中々ビレイ点に到着せず、どうやらなべちゃんにお助けスリングを出してもらっているみたい。そんなに難しいかな?

 なおちゃんがやっと支点に到着し、ロープアップ。しかしそれもノロノロしか上がって行かない。どうもさっきの登攀で腕が早くもパンプしたようだ。うーん、暗雲が立ち込める。

 1時間以上待ってやっと登り始める。実際に登ってみると豊富と思っていたホールドはグローブで掴むと何とも頼りなく、何より壁が立っている。なかなか厳しいなあと思いながらビレイ点に到着し、その上のいさおさんのいる2ピッチ目終了点に到着。しかし、既に3ピッチ目を登り始めていたなべちゃんのロープがなかなか伸びない。どうやら上で苦戦しているもよう。

 そうこうしているうちに時間だけが経過し15時を過ぎてしまった。なおちゃんも怖さが入ってしまったかここでギブアップ。撤退する事に。

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撤退・・・

 いさおさんには一旦なべちゃんの所まで登ってもらってから懸垂下降してもらう。怖いトラバースをもう一度歩き、何とかヘッデンにならずに赤岳鉱泉まで。

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残念だけど

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我々のトレース

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大同心稜を下る

 アイスキャンディーフェスでお祭りの様な雰囲気のテン場でお通夜のような反省会。1級の小同心クラックで撃沈したのに2級下の石尊稜なんてそもそも行けるのか?みたいな雰囲気になってしまった。行った事のある赤岳主稜に登って気持ちよく帰ろうか?なんて話も出たが、それでは前に進めないという事で石尊稜の取り付きまで偵察に行き、ちょっとどんなもんか見てみようとなった。

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赤岳鉱泉

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キムチ鍋

 2日目。モチベーションだだ下がりの中、シュラフの中でうだうだしてしまう。結局出発出来たのは7時45分。日帰りパーティーよりも遅い出発になってしまった。

 石尊稜へのアプローチは行者小屋方面に少し歩き、最初の橋の所を左折して谷を詰める。先行Pがいるようでラッセルは不要。昨日の小同心への取り付きよりはずいぶん楽だ。

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まず谷を詰める

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傾斜が立って来た

 途中、先行Pが引き返して来るのにすれ違う。どうも体調不良者が出たようだ。さらに谷を詰め、急斜面を登るとそこが石尊稜取り付きだった。

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石尊稜取り付き

 何故か壁に取り付こうとしていた先行Pが撤退するという事で待ち時間なしで順番が回ってきた。なべちゃんは昨日よりもスムーズに1ピッチ目を登って行く、中間支点もボルトがあるので安心感がある。続くいさおさんは結構苦労している。二人が見えなくなった所でやはりタイムアップ。我々チームは登る事なく撤退する事に。なべ/いさおチームはその先の雪稜を少し登った所で引き返してきた。聞くと昨日よりかは簡単との事。これならもっと朝早く出発していたら登れたのに(と言っても後の祭り)

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結局撤退

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すごすごと引き返す

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集合写真

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あの稜線を歩いていたかった・・・

 結局、二日連続の敗退に失意のまま赤岳鉱泉に戻り、テント撤収。下山予定よりもずいぶんと早い時間に美濃戸に到着。

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今日も賑わう赤岳鉱泉

 今回、正直余裕で登れると思っていたので、二日連続の敗退はショックだった。1日目は高度感のある登攀でのメンタル、二日目はそもそも登ろうという気持ちが出発時点で欠けていたと思う。

 その他、アプローチの体力や登攀具をスムーズ取り出す事への慣れ、ピッチの切り方などアルパインに必要な経験値が尽く不足していたように感じた。顔を洗って出直します。参加の皆さん、ふがいない山行で申し訳ない。何とか今シーズン中にリベンジしましょう。

記)たろー

<なべちゃんの感想>

今回は、八ヶ岳の小同心クラックと石尊稜と2本の冬期バリエーションに挑戦しましたが、あえなく両方敗退しました。
小同心は、岩登りなのですが、オーバーフローグの岩を掴む感覚に自信が持てなかったのと、高度感のある時に、冷静に体が強張らないリラックスできる体感がなかったなと思いました。
やはり、経験不足かなと感じました。
石尊稜は、正直1ピッチをスムーズに登攀できたので、突破できる気がします。
岩は難しいなと思いましたが、泥壁や草付きは、緊張しないのは沢の経験なのかな?不思議なものですね。
早く沢に行きて〜♪
と思った今日このごろです。

<功さんの感想>

 筆者自身、初の雪山バリエーションとなった今回の山行、結果的にバリエーション・ルートの登攀は非常に手強いものとなりました。下から見ると行けそうなのですが、実際に登ると勝手が違う!(笑)
 恐怖心が勝ちすぎると、判断力や集中力が乱れてきます。あとは、装備品をいかに操作しやすいものを選定し、配置するかもとても重要だと再認識しました。冬用グローブでギヤを素早く扱えなければ時間ばかりが過ぎていきます。
 結局時間切れで完登は出来ませんでしたが、無事に帰ってこられて良かったです。 次回は完登を目標に体力、技術、メンタル、すべてを向上させていきたいと思います。
 登攀は完遂出来ませんでしたが、素晴らしい景色が見られて、楽しいメンバーとテント泊で寝食を共に出来てとても楽しかったです。また、再チャレンジできたらと思います。有り難う御座いました。

<なおちゃんの感想>

2年前から始めた厳冬期アルパイン。
阿弥陀岳北陵、赤岳主稜と行って次のターゲットは小同心クラックと石尊稜。ガイド本や参考にしてる方のブログなど見ても順当な感じ。去年小同心クラック取付きまで偵察に行って準備は万端…のはずでした。

初日は小同心クラック。
まずはアプローチ。しんどいのは去年経験済のはずでしたが、こんなに急だったかな?って思いながら。最後大同心基部から小同心までの恐怖のトラバース。今回はトレースもなし。そこをいさおにぃがガンガン進んでくれる。取付きに到着。なべちゃんいさおさんチームが先に離陸。リードをかって出て私も離陸。1ピッチ終了点手前の最後の所で、ムーブが全く分からなくなり壁の立ち具合にビビり、どっちが先なのか覚えてないけどとにかく怖くなってしまいパニック。終了点にいたなべちゃんにお助けスリングを涙ながらにお願いします。スリング掴んでも怖いものは怖くここで腕がパンクしてしまいました。

何とかあげてもらったもののそこも足場がいい訳ではなく。ロープアップしますが既にパンクした腕にはロープが重い。たろーさんを引き上げ2ピッチ目に行ってもらいます。でもこれが何故か頭上3mくらいのところ。そこにたろーさんといさおさん。なべちゃんとの意思疎通が上手くいかないのか、たろーさん叫んでます。時間的にも私のメンタル的にも無理だと判断し撤退を提案。決定。
そこからテン場までの下りも長くてクタクタになってしまいました。

翌日は全くやる気のない状態。とりあえず偵察がてら取付きに向かいますが、何故か先行者がどんどん撤退していきます。なべちゃんいさおさんペアの2ピッチほどを見てから下山。偵察に行ってくれたなべちゃんいさおさん曰くここは行けそうだとのこと。

今回は気象条件も良く言い訳のしようがない撤退。完全に実力不足です。完敗です。

小同心クラックはこれを書いている今もまだ怖いです。
でも今季中に石尊陵は初日アプローチのトレース付け、翌日アタック。欲張らずこの日程で臨みたいと思っています。

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