奥穂南稜 2019.05.03-05

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緊張のトラバース


<メンバー>
たろー、なお、なべちゃん

<1日目>
上高地(10:40)~岳沢ヒュッテ(13:50)


 GW後半は残雪バリエーションの奥穂南陵へ。天気の心配は無いが縦走の疲れが抜けきらない。それでも中二日で休養と準備を済ませ、つい数日前に後にした上高地へ向けて出発。

 初日は岳沢までなので、のんびりペース。河童橋では「令和」の額を持っての記念撮影に列が出来ていた。河童橋を渡り、木道を歩いて岳沢の登山口へ(実は初めて)気持ちのいい樹林帯を抜けると沢の中の雪渓を登って行く。目の前に広がる穂高の山並みを眺めながら明日のルートを目で追って行くと少し緊張してくる。

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明日登るルート

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こんな所あったんだ

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岳沢登山口

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沢の中を行く

 岳沢小屋は近いはずなのになかなか見えてこない、少々うんざりしてきた所でようやく小屋に到着。小屋のテン場は既にたくさんのテントが張ってある。

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まだかな~

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まだかな~

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少々うんざり

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やっと着いた

 指定された場所にテントを設営し、まずは乾杯で前祝。岳沢小屋は上高地からのアプローチも良く、手軽に雪景色が楽しめるいい場所だ。GWの岳沢小屋はバリエーションルートへの基地として利用する人と、スノーリゾートとして滞在する人の2種類に分かれるみたいだ。

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初めての岳沢ヒュッテ

 明日は早いので早めの夕食。今回はなべちゃんの初食担、「鍋なら簡単なので任せて下さい」との事だったが、〆の主食を持ってきていない事が発覚。山でのエネルギーは炭水化物だよ、とか、今まで食べてただろ? とか、お説教をしながらの夕食となった。(鍋は美味しかったよ、ありがとう)

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今日は早く寝ましょう


<2日目>
岳沢ヒュッテ(5:05)~トリコニー基部(10:30)~トリコニー一峰(13:15)~南稜の頭(17:25)~奥穂高岳(17:50)~穂高岳山荘(18:50)


 アタック当日は早めに起きて素早くテント撤収(下山は難易度の低い涸沢方面なのでテントを担いでの登攀になる)。まだ体が起きていない中、南陵の取り付きへ向けてデブリを越えて行く。

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取り付きへ向かう

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デブリが

 南陵への取り付きは昨日の偵察パーティーのトレースを辿り、右側の小ルンゼから。丁度先行パーティーが取り付いているところだったので見学。上部は小滝になっておりその乗越しに苦労しているようだ。

 いよいよ我々の番。やはり小滝の乗越しで少し苦労したが何とか離陸出来た。気温が低く雪が締まっているのでアイゼンピッケルが良く効く反面、縦走用ピッケルで取り付いたなおちゃんは、ピッケルの刺さり具合が不安のようだ。

 急斜面の雪壁は常に緊張を強いられる。一つのミスで滑落に繋がる恐怖を少しでも減らす為、灌木が出ている尾根にルートを変え、ヤブ漕ぎ覚悟で登って行く。

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この急斜面が結構くる

 ハイマツが所どころ顔を出した雪稜を、時々ロープを出しながら登って行く。まあ、時間はかかるが安全第一。ここで、左のルンゼを勢い良く登ってきた男性3人Pに追いつかれた。力量のあるPと思ったので先を譲る事にする。

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やばいところはロープを出す

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あー緊張するなあ

 すでにかなりの時間が経過し雪が緩んできたのでロープを出す頻度が増える。いやらしいルンゼの先にトリコニ-一峰への取り付きがあり、先ほどの3人組が休憩している。どうやら安定したテラスがあるらしい。我々もザックをおろし大休止。出発から初めて緊張を解く事が出来た。

 さあ、ここからがクライミングエリア。基本、なべちゃんと私がツルベで登り、なおちゃんが中間をアッセンダーで登るというスタイル。登攀の難易度はそれほどでは無く、ロープもいるかな?って感じだったが、落ちたら怪我では済まないのでピナクルで支点を取りながらロープを伸ばす。

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やっとトリコニーへ取り付く

 一峰の螺旋階段を越えた所で先の3人Pに追いついた。リードがなかなか進めないようで苦労しているようだ。ここでかなりの時間順番待ち。コースが空いた後、今度はなべちゃんがリード、トラバース気味に進みトリコニ-Ⅰ峰に到着。

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らせん階段の中

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結構登って来たなあ

 さて、ここからが大変。ロープを出すと途端に遅くなる先行Pとの間にトリコニーを巻いて来た後ろの5人パーティーが横入り。ロープを交差させながら登ってきた。こんなとんでもないマナー違反は本来起こるべきだが、先行Pも5人Pも岳沢まで戻るつもりだと聞いていたので、だまってルートを譲る。おかげで待ち時間はさらにアップ。

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交錯する先行Pと横入りしてきたP

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凄いところにいるの分かる?

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必死のトラバース

 結局、トリコニーを通過するのに3時間近くかかってしまい、流石に焦ってくる。しかし、前を行く5人Pはどんな場所でもロープを出して登って行くので時間がかかって仕方が無い。結局、稜線に出るまでさらに4時間。こりゃ岳沢に戻るなんて完全に無理だな。

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遅々として進まない先行P

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順番待ちの図

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待ちくたびれたよ

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やっと稜線

 やっとのことで奥穂高山頂に辿りついた時には日没間近。美しい夕焼けを眺めながら(内心焦りながら)穂高岳山荘に着いた時には完全に日が暮れていた。涸沢まで下るのは諦め、今日はここでテントを張る事にする。(5人Pも岳沢へ戻るのは諦め、穂高岳山荘に泊まる事にしたようだ)

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奥穂山頂

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槍がきれい

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ジャンダルム

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急いで下ろう

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穂高岳山荘が見えた

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太陽さん、待って~

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何とか日没までには間に合った

ここから雪を整地し、テントを張って夕食を作って食べたらもう21時過ぎ・・精も根も尽き果ててしまった。

つづく


<3日目>
穂高岳山荘(6:50)~涸沢ヒュッテ(8:20)~横尾(10:30)~徳沢(11:40)~明神(12:55)~上高地(14:00)


 3日目、日の出を見る登山者の足音で起こされる。今日は上高地まで下るだけとは言いながら、また横尾からの林道を歩くのかと思うとうんざり。

 テントを撤収し、記念撮影をしたら涸沢方面へ下って行く。目の前には1か月後に挑戦する前穂北尾根が見える。涸沢ヒュッテまでは近いと思っていたけど結構あるなあ。奥穂に向けて次々と登って行く登山者の中にリーちゃんがいた(お互い好きやねえ)。

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記念撮影

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前穂北尾根

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まだまだ元気ななべちゃん

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最終日もいい天気

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涸沢ヒュッテ遠いなあ

 涸沢ヒュッテで小休止の後は黙々と歩く。横尾からの道沿いの雪はすっかり解けていて1週間分ちゃんと季節が進んでいた。徳沢園でカレーを食べ、上高地で記念撮影したら今回の山旅は終了。河童橋から自分達が登ったルートを辿ったら何だか誇らしい気分になった。

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ヒュッテで小休止

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奥穂

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横尾

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徳沢

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明神岳

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河童橋にて

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今回のルート

 この冬のチャレンジ山行の締め括りとしては中々手応えのあった奥穂南稜。ただ、自分達の手に余るというよりも、訓練の成果を存分に発揮出来、緊張しながらも楽しめた山行だった。すっかり信頼できるパートナーになった、なおちゃん、なべちゃん、ありがとう。もっと一緒にいろんな所へ挑戦し、いろんな景色をみてみたいなあ。またお付き合いください。

記)たろー

<なべちゃんの感想>
あこがれの河童橋から奥穂南陵ルートを見て、テンションMAX!
ワクワク、ドキドキ!楽しみ~!
初日は、岳沢小屋まで登って、なべちゃんの初食担で鍋を大御所のお二方に召し上がって頂きました!
炭水化物がない!!!との厳しいご指摘に深く深く反省を致しました。
スミマセン。平謝りです!命ばかりは。
翌朝、デプリが凄くて身近に雪崩がある環境、リアル雪崩が見てみたいな~。
不謹慎ななべちゃん!
いよいよ、取り付き、雪稜にトキントキンのアイゼンが刺さる刺さる!
憧れのたろうさんとつるべで登攀。
遅いゾ~!と厳しいご指摘。
(時間が押してまして!)
しかし、愛のムチで学びになります!
トリコニーは岩稜歩きで、先行パーティーの割り込みに良い支点を探すのが大変でした。
実は、トリコニーの後、南陵までかなり長い事、時間が押す押す!
太陽様ま~だだよ~!
たろうさんこの辺から輩に豹変。
先行パーティーを煽る煽る!
そんなんで、日没間際に穂高小屋に滑りこみセーフ!
翌朝は、初めての涸沢リゾート。
成る程、外国みたいで1日ボ~とビール片手に呑んだくれて~!
涸沢→横尾→徳沢→明神→上高地
何か嬉しい!なべちゃん上高地を知る!
最後に、河童橋より南陵を見て自分で自分を誇りに思いました!
今回は、たろうさん、なおさんのコンビニ自分も入れて頂き完登できて、
大変に嬉しかったです!
ありがとうございました!
まだまだ、至らぬ点も多くロープをしっかりできるようになるのと、たろうさん先輩の煽りの技術を学べました!(笑)

<なおちゃんの感想>
私の山人生の中で一番怖かったルートが今回更新されました。
奥穂南陵、ダントツで一位です。その分達成感も半端なかったです。

とにかく落ち着ける場所がなく、ずーっと緊張感を強いられる事は私にはとても難しい事でしたが、雪壁、トラバース、岩陵の連続で今年の雪山の締めくくりにふさわしい豪華なルートをクリアできたのはとても嬉しかったです。

でもウェストンさん、奥穂登頂するのにもっと楽なルートなかったんですか?笑

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