<メンバー>
たろー、ふみふみ、なべちゃん、けい
<コース1日目>
椹島(8:30)~赤石沢入渓(8:55)~取水堰堤(12:55)~門の滝下(15:15)~洞窟の滝(17:10)~大ガラン(18:10)~Ca1680m・C1(18:35)
この沢を最初に計画したのは2015年。天気や事故やコロナ禍に翻弄され、転進、中止を繰り返しているうちに、あっという間に8年たってしまいました。
しかし、今年は海の日の三連休の天気がよさそう。コロナ禍も収束し、長年恋焦がれていた赤石沢へチャレンジする機会がようやくめぐってきました。
メンバーは計画当初から一緒に経験を積んできたふみふみさん、そして最近は精鋭メンバーにまで成長したなべちゃん、けい君の4人です。
畑薙ダムの駐車場には5時前に到着しましたが、椹島行きのバスは完全予約制になったせいか早めの臨時バスが出る事もなく、定刻の7:15(より少し遅れて)スタートです。
バスに乗る時には明るくなっていた空も椹島に近づくにつれ車窓に雨粒があたり始めました。おまけに工事のダンプとひっきりなしにすれ違うので、遅々として進まず、椹島到着は8:30になってしいました。
牛首峠まで林道を歩いている時には空模様のように重い気分でしたが、「一級河川 赤石沢川」の看板の前に立つと憧れの沢のスタート地点に立てた喜びから一気にテンションアップ!!!
最初は左岸の杣道を少し歩き、吊り橋の手前から沢に降り立ちます。すぐにWEBでよく見る水位計が出てきます。水量は少な目のようで一安心。
事前の情報では数年前の台風で前半のゴルジュ部分が埋まってしまったとありましたが、よくわからない位の素晴らしい渓相です。次々と現れる淵と小滝を泳ぎを交えて突破、ただ太陽は雲に隠れていて水温も低いので体温を温存しながら進みます。
右岸からスダレ状の滝が流れる所は左岸の残置スリングを使って振り子状にトラバース。ラバーシューズのフリクションがいいのでそれほど難しくはありませんが、落ちたらただでは済まないので慎重に通過します。
その後出てくる難所も水量が少ないせいか、思ったよりも簡単にクリア。巨岩帯を越えると取水堰堤が現れました。入渓後4時間で来られたので「わがパーティーもなかなかやるなあ」とこの時は思っていました。
取水堰堤を越えると赤石沢本来の水量になり、体にかかる圧も一気に増えた感じがします。流されるとただでは済まないのでどうしても慎重になってしまいました。ちょっとした滝も大きく巻き過ぎて時間をロス・・。難易度アップです。
そしてついに門の滝が現れました。谷を塞ぐ超巨大なチョックストーンの両脇から噴き出す水は圧巻。今までWEB上で見たどんな写真よりも迫力があります。右岸のテラスからアプローチし、突破方法を探ります。
よく記録に上がっている右岸のバンドはちょっと怖すぎ・・。対岸へ渡渉出来る水量では無いので左岸巻きも問題外。安全策を取って右岸から流れ込む支流を使って巻きます。
支流の右岸をロープを出して登った後はトラバースをして支流を渡り、小尾根を乗越しますが、ここで慎重になり過ぎてしまい、計3ピッチロープを出す事に。結果、門の滝を越えるのに2時間もかかってしまいました。この辺は反省点です。
門の滝を越えるとすぐに洞窟滝。アブミを使った突破にも手こずり大ガランに取り付いた時には18:00を回っていました。
大ガランも随分と高い所まで巻き上がって通過。この辺のルーファイは難しいな。何とか右岸の泊適地に辿り着いた時には暗くなりかけていました。
テン場では先行パーティーの方が既に食事を終え、焚火を楽しんでいました。何とか横のスペースにタープを張り、焚火に当たらせてもらいます。
ここで思わぬサプライズ。先行Pはてつやさんと若者二人のパーティーでした(自転車で林道を走ってアプローチとの事)。肩身が狭くなってもおかしくない状況でしたが、快適に過ごさせて頂きました。ありがとうございます。
てつやさんからは誕生日が近いふみふみさんへのミニバースデーケーキ(できる男は違います)。
ヘッデンで米を炊いて夕食を作り、ご飯を食べると何とか落ち着いてきました。いろいろ苦戦しましたが目標だった大ガランを越え予定の泊地に辿り着けたので明日の行程は余裕があるはず。そう思いながら早々とタープの下に潜り込みました。
<コース2日目>
C1(6:30)~大ゴルジュ下(7:50)~巻き終わり(11:15)~百間洞出合(14:50)~百間洞山の家(18:00)
翌朝、明るくなってから出発準備、1日目でここまで来られたら今日は余裕があると思い、6:30スタート。てつやさんたちは30分前に出発していきました。
今日は昨日とは違って天気が良く、太陽の下で気持ちのいい沢登り。赤石沢の名前の由来であるラジオネラの赤がとてもきれいです。
出発から1時間と少しで大ゴルジュのある三俣へ到着。心配していた雪渓もほとんど無くこれなら問題無さそう。大ゴルジュの巻き道を探していると、右岸の支流を下降してくる人がいます。
降りて来たのはなんとてつやさん。しかも一人。聞けば若者二人は大ゴルジュに突っ込んで行ったので、巻き道を探していたそうです。過去の記録では30分の歩きで巻けたという情報もあったのですが、どうも踏み跡から先のルートが怖すぎてロープが必要との事。それならばと合流し、5人で遡行する事にします。
それらしい踏み跡を辿って行くと右側が切れ落ちたスラブにうっすらと土がついている場所が現れました。ここを歩いて通過は怖すぎます。ロープを出して何とか越えますが、しっかりとした支点もとれず、かなり難しく感じました。
何とか歩いて行動できる場所まで上がっても踏み跡が錯綜し、トラバースルートを上手く見つける事が出来ません。右往左往しながらGPSで現在位置を確認し、何とか谷に降り立った時には3時間以上経過していました。これはやってしまったか・・・。百間洞山の家の食事の時間までに到着するという目標に黄色信号が点灯します。
後は悪場は無いはずですが、そこは何と言っても赤石沢。それなりに小難しい箇所が出てきます。気持ちに余裕があれば遡行を楽しめるのですが、時間が気になってそれどころではありません。
百間洞出合に着いたのは15:00前。うーん、とんかつは厳しいかな。百間洞も滝がそこそこ出て来て楽しいのですが気持ちに余裕が・・・。15m滝に到着したのは16:20頃
ここさえ越えればあとはゴーロを歩くだけ。左岸のルンゼから巻き上がり、バンドをトラバースして通過します。トラバースはいやらしい感じがしたのでロープを出しました。
後は山の家まで歩くだけ・・・なのですが、バテてしまって足が上がりません。まだ元気なけい君なべちゃんに先行してもらい、お仲間と合流したてつやさんとも別れ、ふみふみさんと二人でトボトボと歩きます。それでも何とか明るい内に百間洞山の家へ到着出来た時にはほっとしました。
今日の宿泊客は我々を除くと4人だけで(あの予約満員は何だったんだろう・・)食事はとっくに終わってしまったとの事・・。それでも何とか温かいご飯にカレーと味噌汁なら準備出来るそうなので、急いで装備を解除します。
快適な食堂で食べるご飯はレトルトカレーとは言え、体に染み渡ります。落ち着いたら小屋で買ったビールでささやかに乾杯し、後は明日に備えて早々に就寝。今日もとてもハードな一日でした。
<コース:3日目>
百間洞山の家(3:00)~赤石岳(6:25)~赤石小屋(9:10)~椹島(12:55)
3日目。予約した椹島発のバスは13:00なので、余裕をもって3:00出発。ハードな遡行を二日続けた後の睡眠時間6時間はきついですが仕方ありません。暗い内に百間平を通過し、赤石岳を目指します。疲労が激しく、既にヘロヘロですがきれいに見える富士山に元気づけられます。
コースタイムより少し遅れて赤石岳山頂に到着。雲一つない空に富士山がきれい。記念撮影していると通りかかった方がライチョウがいると教えてくれました。
あとは椹島まで下るだけ。ガクガクする膝に鞭を打って何とか足を前に出します。1時間ほど余裕をもっていたはずなのに椹島に到着したのはバス出発の5分前。ソフトクリームも食べる事も出来ず、バスに乗り込みました。
8年越しの赤石沢は想像以上に厳しい沢で連日10時間超の行動時間、チャレンジしたのが今回で良かったです。ヘロヘロになりましたが、信頼できる仲間と無事完遂出来て良かった。本当にありがとうございました。
記)たろー
<ふみふみさんの感想>
赤石沢。8年越しの目標にしていた沢へいよいよ挑戦する日が来ました。
しかーし、コロナ禍を過ぎても多くの激務続きで山や沢へ思うように参加出来ない日が続き、目標としていた企画に参加するには心身共に大変コンディションが悪い状態での参加判断でした。大きな不安と、迷惑を掛けないかという心配な気持ちでいっぱいでした。
いつも沢登りは緊張していますが、こんなに不安と緊張をしたのは初めてぐらいでした。
ギリギリまでしまくんが代わりに参加してもらう事に、、、と調整をしていましたが、8年越しの赤石沢です!行きましょう!と強い励ましのお言葉をもらい、不安をよそに行くことに決めてしまいました。
久しぶりの沢登り。そしていきなりのアルプス沢泊。言わなかったけど、入渓時にはクラっとめまいが、、。でも、遡行しながら少しずつ体調もついてくるように、、、なーんてとんでもない。
泣き言なんて言えない!出来ないなんて言わない!やるぞ〜やるぞ〜と自分に言い聞かせ、マイナスな事は考えないようにマインドコントロールする強い気持ちを持ち続け積み重ねた遡行でした。
沢登りとは、「総合格闘技」だと言われるそのものを体験しました。体力激落ちだった身体も気力とみんなのフォローで前に進むものですね。
お互いの状況の確認といかにみんなで突破するのかを考え目標に向かい戦って進むというすごい気迫とその中にあるチームワークに「人は1人で生きてはいない」なんて思わせてしまう総合力の結集でした。
もちろん私は、、、前から後ろから、上から下から、横から、ジャンプの先には受け止めてくれるメンバーが、、、いてくれます。いえ、いてもらいます!「そこにいてね!」「後ろにいてね!」は私の口ぐせになっていました。
1日目はたろーさんの茄子と春雨の麻婆丼。2日目は百間洞小屋でのカレーライスとお味噌汁がジーンと身体に染み渡る夕食になりました。美味しくて幸せいっぱいでした。
驚くほど疲れを感じたのは、スプーンに乗せたカレーライスの重さが腕に辛く、肘をついて食べないといけないくらいの疲れでした。
この2泊3日は感激感謝で一杯の大冒険でした。今までの人生でも最大級の大冒険でした!沢屋はすごいです!身内ながら鈴ハイの沢屋達は本当にかっこいいです!
たろーさん、なべちゃん、けいくん、てつやさん、そして参加調整相談に乗ってくれたしまくん。本当にありがとうございました。
沢登りを始めてから今までご一緒して頂いた沢屋の皆様、沢子さん達も、本当にありがとうございました。今までの経験と皆さんとのチームワークでこんな大冒険が出来る人生を、ありがとうございました。
そして、これからも頑張りたいと強く思います。鈴ハイ沢チームの皆様、宜しくお願い致します。ありがとうございました!
<なべちゃんの感想>
アルプスの沢なので、氷水に入る位に水温が低いかなと思ったけど、そこまで冷たくはなかったです。しかし、積極的に泳ぐような感じではありません。
本流の水流だけあり、水の勢いが強くて滝を登攀する事はほとんどなく、左右の巻きのルートを探す展開でした。取水堰堤までは泳いだり、へったりと順調に進みました。
今回、印象に残ったのは、門の滝のスケールのでかい事!難所も多くて、体力的、技術的にかなり厳しいものがありました。後、難しい挑戦に向けて実力を上げて行かなければと感じました。
メンバーの皆様に助けられて目標達成できて良かったです。
<けい君の感想>
遡行を終えての感想としては、体力的にも精神的にもタフな沢でした。
門ノ滝の高度感や、大ゴルジュの巻きでの厳しい登攀、渡渉など怖さを感じる場面が多々ありました。
赤石沢ほどのスケールの沢は初めてだったので、余計にそう感じたのかもしれません。
そしてもちろん沢の景色も素晴らしく、とても充実した3日間でした。
でも赤石沢にもう一度行こう!とはしばらくならないと思います。怖いから(笑)
リーダーのたろーさんをはじめメンバーの皆さんのおかげで素晴らしい経験ができました。ありがとうございました。
終わり
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