メンバー:けい(L)、ふみふみ、たまちゃん(記)
コース1日目:駐車地(6:30)−中ノ川出合い吊り橋(7:15)−地獄滝(8:30)−極楽滝(9:30)−モジケ小屋(11:45)−黒滝(14:15)−斜滝45m(15:00)−黒ナメ八丁(15:30)−泊地(16:00)
コース2日目:泊地(7:20)−槍ノ尾登山道(10:00)−七面山西峰(10:20)−七面山登山口分岐(11:20)−地図に無い林道(12:00)−謎の小屋(13:00)−モノレール跡(14:15)−モジケ小屋(15:00)−中ノ川出合い吊り橋(18:00)−駐車地(19:00)
山行記:
大峰 七面山に突き上げる中ノ川を遡行してきました。近年、七面山南壁のビッグウォールには“Long Hope”という11台のマルチピッチ課題が開拓され、一部の変態…もといクライマーには熱いエリアでもあります。とてもそんな難しいルートには手が出ないので、沢ヤは沢ヤらしく谷を詰めて行けばよいのです。
さて、本流に並走した林道を1時間くらい歩くと、中ノ川出合いの吊り橋が見えてきます。結論を言ってしまうと、この“殺人吊り橋”こそが本日の核心でした。ほぼワイヤーだけの朽ち果てた吊り橋で、過去の記録によるとロープを出したパーティーもいるそうです。命知らずの我々は各自モデル歩きで突破しましたが、僕は変な汗?体液?アドレナリン?がたくさん出ました。この吊り橋が崩壊したら入渓困難になるので、中ノ川の賞味期限も近いのかもしれません。



入渓してすぐの5m滝は左岸と見せかけて右岸が正解。沢ヤほいほい♪とはこの事です。ふみふみさんはまんまと騙されて決死のクライムダウンを強いられました。

しばらく平凡な渓相となりますが、進むにつれて豪快な滝の音が聞こえてきました。“地獄滝”の登場です。摩訶不思議、、滝の下半分が岩壁でブラインドされています。こんなおしゃれな滝は初めて見ました。きっと恥ずかしがり屋さんなので隠れているのでしょう。
もちろん地獄滝は地獄過ぎて登れないので、左岸の残置トラロープに沿って高巻いて、適当なところで懸垂下降して沢に復帰しました。



またしばらく平凡な渓相が続き、次の見どころ“極楽滝”が近付いてきました。なんか下からだと普通に悪そうに見えます。どこがどう極楽なのか?、命名した人を正座させて小一時間は問い詰めたい気分です。右岸バンドから滝の中段テラスまで上がり、あとは適当に直登。ふみふみさんが無言で険しい表情になっていたので、念の為ロープを出して引き上げました。




続く12m滝を左岸トラバースして巻き、その後に十字峡を通過。渓相は徐々にゴルジュ地形になってきました。しばらく進むと牛鬼滝ゴルジュの登場です。けいくんが偵察がてら覗きに行きましたが、とてもじゃないけど無理!とのこと。セオリー通りに右岸から巻きます。右岸に上がる3〜4mの壁が微妙に悪いので、安全のためにロープで確保しました。その後は河原を歩いてモジケ小屋に到着。





その後も目まぐるしく渓相が変わり、泳いで取り付く小滝がばんばん出現。全身浸かると寒くて一気に体温を奪われますが、沢ヤの心は熱く燃えたぎっているので大丈夫でした。



そうこうしているうちに連瀑帯に突入。このあたりはフリーで登れる小滝が続きます。一箇所だけ離陸困難で、けいくんが僕のショルダーを踏み台にして突破してくれました。ガイド本によれば、中ノ川は沢登りの古典的・教本的な谷とのことで、変化に富んで全く飽きません。このようなクラシックルートは本当に良い谷だと思います。





連瀑帯を無難にこなして行くと、またしても我々の前に大滝が立ち塞がります。“黒滝”です。さらさらと流れる綺麗な滝で、今回の沢旅で一番の見どころでした。惚れてまうやろ〜!


黒滝を右岸ガリーから大きく高巻いて沢に復帰すると、またしても大滝出現。遡行図によると“斜滝45m”とのこと。到底登れるはずもなく、結局ここも右岸をモンキークライムで適当に巻きました。


ぼちぼちお腹いっぱいなのですが、渓相が変わってナメが続くようになります。どうやらここらへんが“黒ナメ八丁”のようです。猛暑日が続く昨今、ヌメりが酷くて皆でローション相撲しながら進んで行きます。紀伊半島の古い言い伝えによれば、“信じる者は足元をすくわれる”そうです。



幕営地を探しながら歩いていると、いい感じの河原がありました。標高1050mくらいの場所です。
焚き火の準備をして乾杯。沢メシ番長ふみふみさんがスープ&ハンバーグを振る舞ってくれました。やっぱり沢泊は最高ですね。夜は雨が降る予報ではなかったので、そのまま焚き火の横で気絶するように就寝。






2日目は全員寝坊して、結局予定より遅れて出発。どこぞのパワハラ山岳会なら拳が飛んできそうな体たらくではありますが、我々鈴ハイは“新進気鋭のゆるふわ山岳会”なので大丈夫です。鬼軍曹みたいな人はいないので、これを読んでいるそこの貴方も安心して入会をご検討ください。
さて、谷沿いに標高を上げていきましたが、だんだん倒木やら巨岩やらで進めなくなってきました。標高1350mくらいの所で行き詰まり、けいくんのルーファイで左岸ルンゼに活路を見い出しました。最後の詰めに入ると、途端にふみふみさんのスイッチが入り加速して見えなくなりました。




10時過ぎに山頂に到着し、残すは下山のみ。七面尾根から地図に無い林道に合流し、モノレール跡を辿ってモジケ小屋に到着。ここまでほぼ修行の道でした。奥駈道もびっくりです。







モジケ小屋からは不明瞭な杣道を辿りますが、何度も迷子になりました。ザレた斜面でけいくんが滑り落ちていくハプニングもありましたが、ゴルジュハンマーで滑落停止して事なきを得ました。紀伊半島の古い言い伝えには“一家に1台ゴルジュハンマー”とあるそうですが、我々沢ヤには必需品ですね。きっと平家の落ち武者もゴルジュハンマーで生き延びたのでしょう。
余談となりますが、なべちゃんは冬の石尊稜をゴルジュハンマーで登り、おりえさんは白馬主稜アルパインをゴルジュハンマーで登ったらしいです。沢ヤにはペツルの高価なアックスなんて邪道ということを体現されております。ちなみに冬の沢泊では朝に凍った沢靴を叩き割るのにも有効だと聞いたことがあります。



薄暗いなか“殺人吊り橋”を渡り、ヒルの集中攻撃に怯えながら林道を歩きました。時刻は19時を回り真っ暗。ガイド本に記載されている下山6時間は嘘八百でした。楽しい遡行だったのに、過酷な下山核心によって記憶を塗り替えられてしまいました。おい、どうしてくれるんだ?

とてもハードな山行だったので、たぶんもう2度と来ることは無いでしょう。誘われても絶対に来ません。次回は本流で遊ぶか、右俣(宇無ノ川)で癒されたいですね。
おしまい。
記)たまちゃん
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